二人展終了


ギャラリー上り屋敷での二人展にお運びいただいた皆様
ありがとうございました。
暑い中、遠方からのお客様もみえられて
こちらが申し訳なく思うほど有難く嬉しいことでした。


石原さんの作品から受けるもの。
オーナーさんとのやりとりの中で生まれる
自分の作品の新たな一面。
個人的には収穫の多い展示になりました。


次回は9月に原宿のStyle-Hug Galleryさんで個展を予定しております。
どうぞよろしくお願いいたします。

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展示のおしらせ


石原稔久・クロヌマタカトシ 二人展 「こく」

日時:2013.7.23|火|⇒28|日| 13:00〜18:00
場所:ギャラリー上り屋敷 東京都豊島区西池袋2-32-6



土と木の、生きた彫り物の作品展。


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旅の記録 -フランス-

フランスへ行くのは初めてだった。
学生の頃、建築の研修で北イタリアへは行ったけれど、それ以来のヨーロッパ旅行。
フランス語はもちろんのこと、英語すらろくに話せない僕たちは
少々の不安を抱えながら飛行機に乗ったのだが、終わってみると特に不自由なこともなかった。
ちょっとした行違いといえば、頼んだ料理が想像とは少し違った形で出てきたことくらいだ。




パリ滞在中は灰色の重たい空模様だったが
石造りの街並みには似合っていたようにも思う。
パリはとてもコンパクトな街で、地下鉄の駅が短い間隔で点在しているので
名所はほとんどそれで観て回れる。
それでも僕たちは歩くのが好きなので、地図を片手にクタクタになるまで歩き回った。

目的の教会やお店などはいくつか挙げていたけれど
細かいスケジュールはその時の気分に任せた。
一番の目的はこの街の空気を味わうこと。
街角のカフェでお茶を愉しむ人々や広場で音楽を奏でる人。
アパートメントのベランダに飾られた花壇、色取り取りの果物が並ぶマルシェ、公園の緑。
その中をただふらふらと風に吹かれて歩いた景色や街の音が
今では一番印象的に映っている。

訪ねた場所の中では、剥製屋デロールとザッキン美術館が刺激的だった。



都市を離れ、西へ足を伸ばした。

世界遺産にもなっているモンサンミッシェル。
大きな岩山の周りを護るように建てられた石造りの家々と
中心に聳える石の教会。
その一つ一つの石の表情がなんとも美しい。
時間の蓄積で少しづつ削られ、色褪せ、風化している。
その上ここには戦争や革命といった数々の命の歴史が刻まれ
その姿により一層の重厚感を与えていた。

僕が訪れたのはちょうど日曜日で、ミサの行われる日だった。
パイプオルガンと賛美歌が聞きたいという軽薄な理由で参列したのだが
そこに集う人々の真っ直ぐな思いを目の当たりにし、心の内で恥をかくことになる。
寒く冷えきった石に膝をついて祈りを捧げる子供や老人。
その姿は純粋無垢そのもの。
それに比べ微かな思いだけでこの場所に居合わせてしまった自分たちは
それ以上留まってはいけないような気がして、静かにこの場所を去った。




教会を出て周囲の小道や対岸の麦畑などをしばらく散歩した。
風に吹かれ揺ら揺らと歩いていると、自分たちと同じように揺れている草花が目に入る。
壁の石と石の間を住処にもらった彼等も、どうやらこの場所に集うものたちのようだ。
遠くを見れば羊や牛たちが草を食み、目の前の石塀では鳥が羽を休めている。
この場所は生命を包み込む大きな山だと思った。
人間も動物も植物も、命ある者たちが集い、それを優しく受け止める大きな存在。
それはきっと今も昔もこの場所に在り続け、あらゆる者たちを内包してきたのだろう。
僕という小さな存在も、この大きな存在に包まれて、その一部になっているかのようだった。
教会で感じた恥じらいすら、溶けて。




フランスで行きたい場所があった。
東の外れ、スイス国境近くにあるロンシャン礼拝堂。
建築家ル・コルビジェの後期の作品で以前から図録などでは何度も見ていた。

朝早くにパリを出て、電車を乗り継ぎ、最寄りの駅から歩いて坂道を登る。
丘の上のこの場所に辿り着く頃には13時を過ぎていた。
そういった道のりも、僕の中ではこの建築の一部として記憶に焼き付いている。

最初の印象は、思ったより小さい、だった。
もっと巨大なものを勝手に想像していたので呆気にとられる。
しかし観ているうちにじわじわと内に入ってくる。
何度も写真で見ていたものが、実際にそこに、在る、ということ。
手で触った時の壁のごつごつした感触、内部の光の入り方、響く声。
言葉にしてもしっくりこない、その佇まいは
やはりこの場所に立って耳を澄ませないと感じることができない。
建築か、彫刻か、オブジェか。
この塊は一体、なんだろうか。
コルビジェは一体、何者だったのだろうか。
それはいつしか自分自身への問いへとすり変わり
今も僕の内側を木霊している。



旅はスペインへと続く。
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