個展 @ 空とたね [ 香川 ] --- 2016.9.22 - 10.02

 

大きな雨風の後、空が燃えていた。

天地が再生している。

 

自然は安定と不安定を繰り返しながら

絶妙なバランスで自ずから然って死と再生を繰り返す。

 

動植物もまた生態系の環の中で

個と全体に対してそれぞれに関係し合い、役割を持って生きている。

 

いつからだろうか。

僕ら人間だけがその環の外に出てしまった。

 

 

狼に関しての本を読んでいると

狼と鹿の関係が森全体に影響を及ぼすという。

米国の国立公園ではいなくなった狼を再導入すると

増え過ぎた鹿の数が安定し、草木が安定し、鳥類、魚類、両生類にまで影響する。

川の流れ方まで変わり、森全体が変わったという。

頂点捕食者の役割がいかに大事かがわかる。

 

きっと放っておいても自然は自らバランスを取っていくのだろう。

増え過ぎた鹿が草木を食べつくし、森を枯らすが

食料を失った鹿も死を迎え、草木は再び増えていく。

しかし生物の多様性は、果たして取り戻されるのか。

わからない。

 

生物の多様性がいかに大事なことなのかは

僕には全容を把握できないけれど

人間が森の重要な1ピースであった狼を抜き取ってしまったのは

間違いがない。

環の外にいる人間が。

 

 

人間だけがこの環の中にどうしても入れない。

森の中では暮らすことができない。

だから森を切り開いて農耕を始めた。

他者に食べられることを良しとはしない。

食べられる危険性を排除していった。

狼や熊を殺した。

村は安全になったがもっと恐い者が襲ってきた。

人間。

戦争。

 

 

犠牲になるなら国よりも森でありたい。

しかしその方法がわからない。

 

こんな時に祈るという行為が生まれたのかもしれない。

生贄を捧げたのかもしれない。

 

しかしそれも人間の都合でしかない。

貰うばかりで与えることができない。

 

人間は無力なのだと思う。

ただ祈ること、しかできなかったのだろうと思う。

 

僕も木を前にしたら何もできない。

無力さを嫌でも感じる。

逃げ出したくなる。

もうあきらめて

業をひとつひとつ削り落としていくしかない。

 

ラスコー人もきっとそうやって壁面に泥をこすり付けていたのだろう。

 

僕は原初の人類のような生活は到底できないけれど

精神だけは肖っていたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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御礼

 

ギャラリーみずのそらで開催しました二人展は無事に閉幕いたしました。

お越しいただきました皆様ありがとうございました。

 

みずのそらのスタッフさんとナカオさんのおかげで素晴らしい空間になりました。

会期があっという間に感じ、最後片付ける時は名残惜しい気持ちになりながら

空間をもとの状態に戻しましたが、今でも風に揺れる蝶が脳裏に浮かびます。

 

 

 

 

 

 

 

 

行き先を定めずに彷徨うことを好む両者の旅は

偶然にも名前が似ているという理由で交わることになる。

 

木とFRP。

素材の接点も薄い二人の唯一の共通点は

時間を重ねるということ。

じっくりと素材に向き合い、自分と向き合う時間を持つ制作の中で

お互いが重ねてきたものを、力を抜いてぱっと手を放し

空中に投げて、水面に漂わせてみたい。

着地点は、定めずに。

 

 

 

 

 

 

 

浮遊展はこれからも続きます。

少しずつ変態しながら。

 

 

また、何処かで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

exhibition - -
チェス盤

 

価値観の異なる両者が化学反応をおこし

新たなものが生まれることがある。

今回のチェスセットがそれに当たると思う。

 

ナカオタカシさんと二人展を行うに当たって

4年前からお互いのアトリエを行き来しながら打ち合わせを重ねて来た。

木とFRP(繊維強化プラスチック)という正反対ともいえる異素材の組み合わせで

どんなことができるのか、想像を膨らませてきた。

お互いに無理なコラボレーションはしないという意見は一致していた。

コラボのためにものを作るのではなく

よりいいものにするために結果的にコラボしたものになればいい。

そんな距離感での打ち合わせが続いた。

 

当初僕がチェスセットを作る際、チェス盤は木製のアンティークのものを使おうと思い

ハンガリーの古いチェス盤を用意していた。

しかしその盤は市松模様が黄色と黒の組み合わせで、どうもイメージ通りではなかった。

僕の理想的な組み合わせは灰色と白で、駒も白と黒が一般的だけれど

灰色と白の世界観で統一して作ってみたかった。

 

そのことをナカオさんに伝えたのかどうか、定かではないけれど

ナカオさんのイメージの中でもそれは一致していた。

ただ、試作で作ってくれた小さいサイズの盤は確かに綺麗だったのだけれど

少し綺麗すぎるかなとも思っていたし、灰色のトーンも薄めで柔らかい印象だった。

 

それが展示開始一週間前のことである。

 

それからナカオさんは試行錯誤を繰り返し、再度盤作りに取りかかる。

僕は僕でそろそろ駒の着色に入らなければ間に合わない。

手元にあるのは試作の盤で、これに合わせて色を塗るしかなかったのだが

試作盤に焦点を合わせてしまうと、やはりイメージと異なり綺麗すぎてしまう。

苦戦し、悩んだ。

着地点が見えない。

合わせにいくか、思い切って放り投げるか。

今回の二人展のテーマは浮遊である。

今まで積み重ねてきたお互いの時間、打ち合わせの時間を信じて

自分の理想的な色を選ぶことにした。

ナカオさんがどんな盤を仕上げてきてくれるのか、内心どきどきしながら。

 

展示当日の朝、いよいよ盤と駒が合わさる時が来た。

僕たちは感嘆の声をあげる。

理想的な組み合わせだった。

 

聞くとナカオさん自身もびっくりする変化が本番で起きたらしい。

作者の想像を超えて出来上がった今回のチェス盤。

僕が見たことのあるチェス盤の中で最も美しい盤だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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